京都桜守・十六代目佐野藤右衛門さんは、人間国宝のような方です。
2016年1月23日(土) かねてからのお願いが叶い、
醍醐桜(岡山県真庭市)を診ていただきました。
醍醐桜は樹齢千年といわれる本邦屈指の名桜ですが、ここ数年、急に花付きが悪くなり、地元真庭市でもたいへん心配されていました。
京都から車でいらした藤右衛門先生、まず木槌を取り出しました
コツコツと優しく幹を叩いて耳を澄ませます。
まるで大桜と対話しているようでした。
「ここは空洞や」「あ、ここは元気や」
どうやら幹の中は部分的に朽ちて空洞になっているようですが、元気な維管束もたくさん残っているようでした。
「胴吹きしてますやろ? 桜がまだまだ生きようとしている証や」
次に先生は注射器を取り出しました。
桜に注射ですか???
なんと注射器に煙草の煙を吹き込みました。
そして、針先を木の皮の隙間に差し込むと、ピストンを押します。
中がしっかりしていると、煙は跳ね返ってきますが、皮の中がスカスカに朽ちていると、煙は離れたところから出てきます。
左・NPO醍醐桜未来プロジェクトの春木基男理事長 右・佐野藤右衛門先生
こうやって診断が終わりました。
「まだまだ大丈夫や。二百年でも三百年でも生きられるで」
と、心強いお言葉を戴きました。
ただ、支柱が多すぎること、特に鉄の支柱やワイヤーが、枝や幹に食い込んで、そこから樹が腐ることが心配だそうです。
人は、今の形を維持したいあまり、支柱を立てたり、彦生え(根元から出る新しい枝)を払ったりしたくなりますが、本当は何もしないのが一番だそうです。
不要な枝は折れ、また新しい枝が生えて、樹は自ら形を作っていく。
それが「最強」のエドヒガンザクラの力なのかもしれません。