2017年全体講評・村田さち子

応募作品に寄せて
村田 さち子

「わあ、こんなにたくさん・・・」
作品の多さに、正直、悲鳴をあげました。
詩があったり、小説が、童話があったり、すべて読むのに、どのくらい時間がかかるのか・・・・七月末日までに、合唱曲を書かなければならないし、どうしよう。とにかく、先ず、読まなければと、読み始めたら、どの作品も優れていて、量の多さを忘れて読破した次第です。
以下は、私の印象に残った作品についてのメモ書きのようなものです。

吉田勝紀さんの「千年の時を越えた僕と、きぼうの桜」。震災で命を絶ってから、千年経ち、魂が蘇り、千年桜と語り合うという面白い設定。千年の桜に託す祈りが感じられました。

モンゴルの在日小学生の霧雨奈月さんは、三十一世紀の話。おじいちゃんが孫に千年前の大震災の話をするという設定。お互いに尊重しあえる世の中になってほしいという霧雨奈月ちゃんの思いが伝わる作品でした。

畑山静枝さんは童話を二編、出品されました。特に、二作目のキラリンとリリアンという流れ星の話は興味深かった作品でした。

小豆島から四人の詩の応募があり、うち三人は小学生で、片岡心愛、三宅優衣、山田彩葉さん。タイトルは三作が「うちゅう」。宇宙の不思議、宇宙のすごさ、素晴らしさを詠った楽しい作品でした。小豆島からの、もう一人、川井文代さんの作品も、桜の種に託する宇宙への夢のポエムでした。

今回、詩の応募がたくさんあり、特に、北杜市甲陵高校から多くの作品が寄せられ、いずれも素晴らしい作品でした。坂本瑞葉さんの作品は十五才の女子高校生が書いたとは思えない、奇想天外だが、リアリティを感じさせる小説で、二人の子供を震災で守り切れなかった父親の三十一世紀に架かる空想の旅物語です。同じく、甲陵高校の山城恵佳さんの作品も、刺激的でした。この世で一番大きい生物は、実は、木の根っこである・・・というところから始まるユニークな作品でした。また、お父さんとお母さんが語る花伝説を書いた太田実澪さんの作品は主人公が桜の木という設定で面白い作品でした。。谷村澪さんの作品もユニークでした。馬場百合野さんの物語の設定もユニークで、きいとらおの桜の木が星巡りをして、ついに星の力を授かるというメルヘンでした。矢笠良祐さんは桜と震災をテーマにした俳句をたくさん寄せてくれました。他にも甲陵高校生の作品を頂戴しております。このように学校ぐるみで、積極的に作品を創ることを啓蒙してくださったご指導の方に感謝です。

筑波宇宙センター勤務の波多野愛さんは、千年前に宇宙飛行士が宇宙で出会った地球にもらった桜の種から始まる長編童話。読みながら千年の旅をしているような素晴らしい作品でした。

「希望のひょうたん桜」について、丁寧に、詳しく伝えてくださった菊田忍さんも、ありがたかったです。

岩崎祥子さんの桜をテーマにした昔ばなし風のお話もよくまとまっていて、紙芝居にしたら楽しいと思いました。

最後は、今回、最も印象的だった桜庭美夜さんの作品です。
まず、十三才で、このように長い作品を書き上げたという構成力の素晴らしさを評価します。三月十一日の家族の様子。姉、妹の各々の心情を丁寧に描写し、尚、且つ、ただそのままをドキュメンタリー風に書いているのではなく、姉が死んで一週間だけよみがえるというフィクションも織り交ぜて、生き残った者の生命の美しさ、尊さを見事に語っている、素晴らしい作品でした。

以上。
まだまだ取り上げたい作品がありますが、今回は割愛させていただきます。

宇宙的視点から、この星の、いのちの美しさを体感しつつ、ひとつの星で共生するという新しい価値観に基づいた文化交流で、世界を一つに繋いでゆきます。