日本櫻学会で発表します(2017.10.14)


2017年10月14日、玉川大学にて開催される日本櫻学会で、きぼうの桜計画の進捗を報告いたします

【表題】「きぼうの桜」復興と広域交流のための宇宙桜活用事例報告
【著者】長谷川 洋一(一般財団法人ワンアース)富田−横谷 香織(筑波大学生命環境系)
【要旨】 2008年11月から259日間宇宙飛行した日本三大桜を含む各地名桜の種子は、そのごく一部が2010年ごろ発芽、宇宙桜と呼ばれ母樹の各地域で宝物のように育てられている。2015年以来当学会で報告してきた如く、一般財団法人ワンアースでは、この宇宙桜の子孫苗を東日本大震災の全被災地に一本ずつ植える「きぼうの桜」計画を進めている。津波到達点上に長寿で巨大化が期待出来る宇宙桜を植えれば、復興のシンボルになり、次の大津波が来た際の避難の目印となる。また、稀少な宇宙桜は観光資源としても復興に貢献できるだろう。
 ワンアースでは被災三県36の市町村と協議し、現在までに22の市町村で本事業が採択され、うち5の市町村で2017年春に植樹を実施した。植樹に当たっては桜の生育に適した20メートル角程度の広い公共の土地を選定し、必要な土質改良などを実施し、ハート型の植え込み柵など共通デザインを適用している。
 今後千年にわたり地域とともに成長する宇宙桜は、物語を帯びつつ大震災の記憶と教訓を風化させずに伝承する文化財的役割を担うはずだ。そこで、老若男女誰でも参画可能な市民文化を醸成するべく、テーマソング(合唱曲)の制作と物語公募を企画した。著名芸術家(作詞・村田さち子、作曲・しゅうさえこ、編曲・白石哲也)が創作した歌を、植樹祭で地域の子どもらが合唱する。物語は、三菱財団の助成を得て公募した。注目すべき作品は今後刊行予定である。
 一方、宇宙桜という至宝を共有する各地域は宿命的な絆で結ばれるため、交流の気運が高まってきた。これを推進するため、毎年持ち回りで「きぼうの桜サミット」を開催することにした。第1回開催は2017年8月に宮城県七ヶ浜町で試みたところ、6の地域から町長を含む代表が集結し、広域交流の基礎を築いた。植樹地域は毎年増えるため、2020年頃には東北被災地全域、そして阪神淡路や鳥取、熊本までも含む全国的な事業に発展させるべく準備を進めている。地域交流は、高齢者に新たな生きがいを、子どもたちに精神的刺激をもたらす。きぼうの桜は市民文化に彩られ、地域とともに成長し、千年後の子孫たちへの遺産となっていくにちがいない。